介護施設から得られること

老朽木造住宅密集地帯の防災対策にしろ、都市型水害対策にしろ、都心部を迂回する環状道路の建設にしろ、金のかかることばかりだ。
これだけのことを国や地方自治体のとほしい予算でやらなければならないとなると、大きなうわものを建てるような派手な都市再生プロジェクトは全部民間企業に任せたとしても、地味な社会基盤整備だけでさえ、まかなうだけの予算があるのかということが心配になってくるm 大丈夫、予算はある。 二一年三月末日で、新産業都市建設法という法律が、めでたく期限切れ廃案になった。
この法律は、日本中の一五の地域を指定して人工的に工業生産の基盤を作るという、金食い虫の標本のような計画に法的根拠を与えたものだった。 一九六二年の一次全国総合開発計画発足以来、三九年間にわたってじっに七九兆円という金が一五の新産業都市と、六つの整備地域と称する場所に注ぎ込まれてきた。
そのうちたったひとつでも自立した工業生産基地になりおおせた場所はなかった。 一年当たりで二兆円を超す金が、のんびりした田舎の景色を中途半端な工業地帯風に悪化させる以外、まったくなんの意味もない政策の推進にぶち込まれてきたのだ。
さいわい、二000年度末でこの新産業都市建設計画は終わっている。 だから、年間二兆円の金が浮いたわけだ。
都心部の老朽木造住宅密集地帯の防災対策、都市型災害に備えた立坑ネットワークの構築、東京外環道・圏央道・二東名の推進、この三つを全部合わせてもこれから一年のあいだに一二兆円から一三兆円をかければ十分実現できる。 一年当たりにすれば、一兆二000億円から一兆三000億円だ。
新産業都市建設計画で無駄づかいしてきた金のうち半分近くは国債や地方債の償還原資に回しても、大都市圏で一日でも早くやらなければならない基盤整備に使う金は確保できるわけだ。 ぎれのプロジェク密集市街地の防災対策も、都市型水害対策も、東京都心部を迂回する高速道路網の建設も、みんな非常に意義のある公共投資だ。
しかし、日本経済の最大の特徴は、いまもネットワークとして機能している鉄道網を持っていることるなにある。 だとすれば、投資効率がいちばんいいのは、大都うど市圏の「痛勤」事情を改善する、地下鉄や近郊電車網の整か備だろう。

日じつはこの点でも、やっと石頭の日本の官僚たちが変わ園りはじめている。 たとえば、大崎・大森・大井町の「大三時角地区」の連絡を良くするりんかい線の大崎への延伸にしても、もう着工している池袋から明治通りの下を通って渋谷に達する営団地下鉄一三号線にしても、川崎市を南北に貫く川崎縦貫鉄道にしても、需要を先取りするのではなく、現にある需要に応えるために建設されている。
これは、画期的な変化だ。 いままでは、日本の大都市圏の鉄道整備は、一五年に一度という時代ばなれした悠長な感覚で開催されるナンタラか。
タラ審議会というやつで、「一年先、二年先の需要を広い視野と深い学識で予測して、需要に先回りする建設計画」を心がけてきた。 その結果は、ご承知の通りだ。
もう二、三年前から、いまから地下鉄の山手線を作るならJR山手線の西にはみ出した輸にしなければ人口動態に合わないなんてことは分かりきっていたのに、何十年か前の古証文に縛られて、山手線の東側にはみ出した大江戸線なんて愚劣な路線を作ってしまった。 「自分には一年先、二年先にどういう需要がどのくらい発生するかが分かる」なんてことをいう人間は、どんなに立派な大学の「先生」だろうと単なる大ぽら吹きか、たちの悪いペテン師だ。
この連中のいいなりになってやってきたプロジェクトが、現実に発生している需要の後追いでやったプロジェクトよりうまくいったなんて例は一つもなスタープランとはまったく無関係に、苦しまぎれのその場別しのぎとして採用されたプロジェクトだということが、成の確率を高めている。 とくに、営団二二号線が渋谷駅に乗り入れるこ七年までには、いまは渋谷の真ん中の一等地の地表面を使っている東急東横線渋谷駅を地下化して、営団二二号線と地下で相互乗り入れできるようにするというプランは、絶対大成する。
この路線で、いままで京浜東北線に沿ってぐるっと山手線を半周しなければならなかった、横浜方面から埼玉方面への乗客の流れが、ほほ直通で行き来できるようになる。 さらに、東横線渋谷駅の地下化で開放された地表のスペースは、大規模な再開発計画のタネ地になる。

この東横線渋谷駅の地下化と呼応して、渋谷区が渋谷駅周辺二二ヘクタール(二二万平方メートル)という広大なスペースの整備計画の策定にかかっているからだ。 渋谷と新宿の商圏特性を比較したところで詳しく書いたが、渋谷の泣き所は一軒当たりの床面積の狭い店が多いので、商圏全体の総床面積で新宿、池袋、銀座・有楽町に見劣りすることだ。
だから、東横線渋谷駅の駅舎内の敷地だけなんてしみったれたことをいわずに、周辺のペンシルピルも巻き込んだ大がかりなプロジェクトにすればいい。 この事業で主導権を握るのは東急電鉄グループだろうが、総事業費一二兆円ということになったら、東急グループの総力をもってしでも、資金が足りないかもしれない。
しかし、不動産投資信託というかたちで不動産投資のための資金を一般庶民からも小口で調達できる仕組みは、まさにこういうプロジェクトを実現するためにあるようなものだ。 棟のオフィス商業施設複合ピルに変わったら、渋谷は最大の弱点である商業施設の総面積の少なさをみごとに克服するだろう。
そして、一九六01七0年代に初代から二代目への代替わりをすませてしまった渋谷が、次の代替わり期であるこ三01四0年代を待たずに、本格的な都市改造に取り組むということにも注目したい。 渋谷はたぶん、六本木を一回りも二回りも大きくしたようなスケールの大きな「年齢不詳の美女」に変身することを意味するからだ。
この営団二二号線の予定駅の中でいちばん化けそうなのは、明治通りと明治神宮北参道との交差点あたりだろう。 この近辺は、渋谷から原宿を通って裏原宿という新しいファッション産業拠点と意外にしっかりしたオフィス街が南から進出してきで、北は新宿高島屋の開業以来、少しずっしゃれた店もできはじめている。
しかし、いまのところこの界隈でしゃれた店というと、ポーネルンドという北欧製の主に幼児用のおもちゃを売る店の日本でのフラッグシツプがあるぐらいで、あとはまったく地味だ。 だからこそ、こういう地下鉄駅一つあればどこへでも行き来が便利になるところは、地下鉄開通で大化けするだろけない。
「新千駄ヶ谷」というのだ。 だいたい、そばにある「有名」な地名に限定的な接頭辞をつける駅名の中でも、「新」という接頭辞はいちばん愚劣だ。
そばにあるってことが分かるだけで、方向や地形上の特徴は全然分からない。 一、「シンセンダガヤ」では、耳で問いただけだと名古屋の人が井の頭線の神泉に行きたがっているのか、本当に「新千駄ヶ谷」に行きたいのか、区別がつかないではないか。
そこで、提案。 この駅には「裏参道」という名前をつけたらどうだろうか。


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